
気になる北志賀 ホテル
日本の経営者はそもそも保守的な人が多いから、いったん借金拒絶症にかかると、そこから脱出するには相当な時聞がかかる可能性は高い。
日本の経営者がみんな借金拒絶症に陥っているのにそれを政府が放置したら、日本経済は半永久的にバランスシート不況から抜け出すことができない。
だから企業経営者のみなさんに早く借金拒絶症のトラウマを乗り越えてもらわなければいけない。
したがって今はすべての政策の焦点をそこに当てるべきである。
例えば設備投資の償却期間をこれから5年間に限って大幅に短縮するといった政策を打つべきである。
当初設定されている期間の半分の期間ですべて償却してもいいということになれば、企業はお金を借りてでも直ちに設備投資をしようとするはずである。
その方がずっと得だからだ。
もっとドラスチックにやるのであれば3分の2ぐらいにしてもいいかもしれない。それを時限立法でやるのである。
無期限にしてしまうと、「なにも今すぐ設備投資を急ぐ必要はない」ということになって、効果がなくなるからである。
また投資減税は企業が投資した分だけ減税になるので、他の減税に比べ景気浮揚効果が大きい。
ところで、民間の資金需要が弱いという日本の現状は、今ようやくマスコミが注目し始めた新銀行東京の損失問題とも直結している。
今のマスコミは、同行の損失の原因は単にずさんな融資にあったと書いているが、同行が20O4年に設立された背景には、民間に資金需要がないはずがなく、需要が表面化していないのは、従来の日本の銀行が無能で担保をとる以外に貸し出しの術を知らないからだ、という考え方が根底にあった。
したがって担保に頼らずに借り手の信用度を直接チェックするシステムを導入すれば、資金需要、とくに中小企業からの資金需要はあるはずだというのがこの銀行の開業の理由だった。
同様の考え方は木村剛氏がつくった日本振興銀行にも見られ、この2つの銀行は日本の従来の銀行の無能さを証明するというのが設立目的の一つだったのである。
現実の結果はまったく逆になり、とくに新銀行東京に至っては開業後わずか1年で自己資本の8割を失うという、近代の銀行史では考えられない悲惨な結果となった。
これは、元々民間資金需要がないところに無理やり貸し出しを増やそうとしたことが最大の原因であり、過去十数年の日本の現状を知る者からすれば当然の帰結であった。
不可解なのは、これだけ損失が拡大するまで、金融庁が一回も検査をしていないという事実である。
彼らがもう少し早く検査に入っていれば、都民の血税を元にした同行の資本がここまで致損することは回避できたはずであり、その意味で金融庁の責任は問われるべきだろう。
とくに、金融庁が他にすることがないのかと思うくらい、民間金融機関に箸の上げ下ろしまで干渉しているなかで、新銀行東京が1000億円近くも損を出しているのが、見落とされ放置されていたということは驚くべきことである。
これでは結局、金融庁も「民」には厳しくても「官」には甘かったと非難されても仕方がないだろう。
また、この新銀行の教訓は、今後の郵貯銀行のあり方にも重要な意味を持っている。
ここも「官」出身の銀行が有り余る資金を「民」へ流し込もうとしているが、民間資金需要がこれほど弱く、また自行内に民間へ融資をした経験者が極端に少ない状況では、よほど注意しないと、彼らも極めて短期間に不良債権の山をつくりかねないからだ。
私は以前から、これだけ民間資金需要が弱い時に無理やり郵貯を民営化して、経験もない彼らに民へ資金供給をさせるのは危険だと主張してきたが、今回の新銀行東京の惨状を見ると、郵貯銀が同じ間違いを犯す可能性は極めて高いと言わざるを得ない。
今回の教訓は、このような経験不足の「官」出身銀行には、当初から金融庁の精鋭を常駐させて監視体制をしっかりしたものにするか、当初は国債だけの運用に限定し、本当に民間の資金需要が出てきた時点で少しずつ国債以外の運用枠を拡大する、といった処置が必要ということを示している。
ここでとくに注意しなければいけないのが、銀行の3効果と呼ばれる傾向であり、それはこれまで融資したことがない分野への審査が甘くなる傾向を指す。
82年の中南米債務危機でも危機発生直前までブラジルやアルゼンチンにお金を貸したことがないという各国の銀行が大挙して「国際分散投資」ということで中南米へ融資を拡大していた。
また1982年だったと思うが、インドネシアが初めて国際シンジケート・ローン市場に借り手として現れた時、インドネシア向けは初めてということで多くの銀行が競い合い、結局インドネシアが払う金利は、以前からこの市場の常連だったスウェーデンよりずっと低くなってしまったことがある。
ある種の借り手や投資案件が金融機関の資産に占める割合が極めて低い時は、その種の案件への審査が極めて甘くなりかねないということは、東西を問わず銀行業でよく発生する問題なのである。
郵貯銀が民間への貸し出しを増やせという大義名分のなかでこの3つの心理に陥って不良債権の山をつくってしまう危険性は、新銀行東京の例にあるように極めて高い。
しかも郵貯銀がその膨大な資金を持って民間への貸し出し合戦に参戦すれば、ただでさえ資金需要がないなかで、銀行の貸し出し金利はすさまじい過当競争にさらされ、さらに低下するだろう。
銀行がリスクに見合った金利をとれないということは、郵貯銀を含めて国内のすべての金融機関の体力を弱めることになり、このことは後日再び大きな銀行問題につながりかねない。
郵貯銀の参戦で民間への貸し出し合戦が激化したら、多くの民間銀行はリスクに見合わない民間への貸し出しを削減し、国債などの購入を選ぶことになろう。
ということは、民間貸し出しに経験もノウハウもない郵貯銀が民間融資を増やそうとするなかで、経験やノウハウを持つ民間銀行は官に資金を流すという本末転倒の事態が発生する。
このことは日本経済全体にとってなんの利益にもならないばかりか、囲内金融機関の体力を弱めは効果から巨大な不良債権の山を残しかねない。
今の日本で「官出身」または「固有民営」の金融機関に存在意義を見出そうとするならば、それは国債のみの運用に限定し、その結果、民間よりも預貯金の金利は若干低くなるが、その代わり民間にはない完全なE全性を売り物にする金融機関だろう。
以前の郵貯に問題があったのは、「官」の機関であったにもかかわらず民よりも高い金利を提示するなど民業圧迫が目立ったためであるが、そこは運用を国債に限定することによって解決できる。
しかも現在も含む過去18年間の日本では、政府の借り入れが経済とマネー・サプライこの点については両方を支えていた。
政府が唯一の借り手であったからだ。
ということは、政府が最も高価で資金調達できることが日本経済にとっても個々の納税者にとっても重要になってくるが、これまでその役割を担っていたのが郵貯であった。
しかも民間の借金拒絶症が続くなか、郵貯には当分その役割を続けてもらう必要がある。
ということは、郵貯の民営化を急ぐ理由はまったくないのである。
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